りにもなる。かたがたこれは自分ひとりの胸に納めておく方がいいと考えて、家内のものにも秘《かく》していた。そうして、幾年を送るうちに、自分ももう馴れてしまって、さのみ怪しまないようにもなった。
ところで、今度ここを立退くについて、家屋はむろん取毀されるのであるから、この機会に床下その他を検《あらた》めてもらいたい。あるいは人間の髑髏《どくろ》か、金銀を入れた瓶《かめ》のようなものでも現れるかも知れないと、その主人がいうのだ。成程そんなことは昔話にもよくあるから、物は試しにその床下を発掘してみようということになると、果して店の梯子の下あたりと思われるところ、その土の底から五つの小さい髑髏が現れた。但しそれは人間の骨ではない、いずれも獣の頭であることが判った。その三つは犬であったが、他の二つは狢《むじな》か狸ではないかという鑑定であった。いつの時代に、何者が五つの獣の首を斬って埋めて置いたのか、又どうしてそんなことをしたのか、それらのことは永久の謎であった。
二、三の新聞では、それについていろいろの想像をかいたが、結局不得要領に終ったようだ。
三
第三は十三夜――これは明
前へ
次へ
全20ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング