月の夜がたり
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)落語家《はなしか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二十六夜|待《まち》というのは
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)てくてく[#「てくてく」に傍点]あるきで、
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一
E君は語る。
僕は七月の二十六夜、八月の十五夜、九月の十三夜について、皆一つずつの怪談を知っている。長いものもあれば、短いものもあるが、月の順にだんだん話していくことにしよう。
そこで、第一は二十六夜――これは或る落語家《はなしか》から聞いた話だが、なんでも明治八、九年頃のことだそうだ。その落語家もその当時はまだ前座からすこし毛の生えたくらいの身分であったが、いつまで師匠の家《うち》の冷飯《ひやめし》を食って、権助同様のことをしているのも気がきかないというので、師匠の許可を得て、たとい裏店《うらだな》にしても一軒の世帯をかまえることになって、毎日貸家をさがしてあるいた。その頃は今と違って、東京市中にも空家《あきや》はたくさんあったが、その代りに新聞広告のような便
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