しやうほん》には近松半二と名をならべて、近松加作と署名するがよからう。
お作 (感激したやうに)はい。
半二 好いか、きつと頼むよ。
お作 はい、萬一のときには一生懸命に書いてみます。
[#ここから5字下げ]
(障子の内にて又もや三味線の調子を合せる音きこえる。半二は咳き入る。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
庄吉 (又もや障子をあける)今度はお米のサワリのところを、鳥渡お聽きに入れたいと申します。(云ひかけて覗く)大分お咳が出るやうでござりますな。
半二 いや、かまはない。早く聽かせてくれ。(又咳き入る)
お作 お藥を持つてまゐりませうか。
半二 いや、お前もこゝで聽いてゐろ。
[#ここから5字下げ]
(障子の内にて又もや淨瑠璃がきこえる。)
※[#歌記号、1−3−28]問はれてお米は顏をあげ、恥かしながら聞いて下さりませ。樣子《やうす》あつて云ひかはせし、夫の名は申されぬが、わたし故に騷動起り、その場へ立合ひ手疵《てきず》を負ひ、一旦|本復《ほんぷく》あつたれど、この頃はしきりに痛み、いろ/\介抱盡せども效《しるし》なく、立寄る方《かた》も
前へ
次へ
全28ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング