あめをおぶ》」というのは、まさしくこの趣であろうとも思われた。彼は慰めるように又言った。
「はて、われらの約束にいつわりはござらぬ。あすでもあさってでも、かならず一緒に連れ立って参る。文のたよりさえ遣《よこ》されたら、なんどきでもすぐに誘いにまいる。叔父が頑固になんと言おうとも、われらがきっとその前に連れ出して引き合わしてみしょう」
 頼もしそうな誓いを聞いて、玉藻は嬉しそうにうなずいた。二人はひたと身をよせて更に何事をかささやき合おうとするところへ、木の間伝いにここへ近寄って来る足音がきこえた。兼輔はすこし慌てて見かえると、その人は三十をまだ越えたばかりの痩形の男で、顔の色はやや蒼白いが、この頃の殿上人には稀に見る精悍の気がその鋭い眼の底にあふれていた。彼はわざと拗《す》ねたのであろう、きょうの華やかな宴の莚に浄衣《じょうえ》めいた白の直衣《のうし》を着て、同じく白い奴袴《ぬばかま》をはいていた。
 彼はきょうのあるじの忠通の弟で、宇治の左大臣|頼長《よりなが》であった。彼は師の信西入道をも驚かすほどの博学で、和歌に心を寄せる兄の忠通を常に文弱と罵っているほどに、抑えがたい覇気と野心
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