の神もこの晴れがましい宴《うたげ》の莚《むしろ》を飾ろうとして、この日は朝から美しい日の光りが天にも地にも満ちていた。
風流の道にたましいを打ち込んで、華美《はで》がましいことを余り好まなかった忠通も、おととし初めて氏《うじ》の長者《ちょうじゃ》と定められてからおのずと心も驕《おご》って来た。世の太平にも馴れて来た。この当時の殿上人が錦を誇る紅葉《もみじ》のなかで、彼は飾りなき松の一樹と見られていたのが、いつか時雨《しぐれ》に染められて、彼もまた次第に華美を好むように移り変わって来た。もう一つには藤原氏の長者という大いなる威勢をひとに示そうとする政略の意味も幾分かまじって、きょうの饗宴は彼として実に未曽有《みぞう》の豪奢を極めたものであった。かねてこうと大かたは想像して来た賓客《まろうど》たちも、予想を裏切らるるばかりの善美の饗応《もてなし》には、そのやわらかい胆《きも》をひしがれた。あるじは得意であった。客もむろん満足であった。
思い思いに寄りつどって色紙や短冊に筆を染める者もあった。管絃《かんげん》の楽《がく》を奏する者もあった。当日の賓客は男ばかりではこちたくて興《きょう》が
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