いて、なぜそんな怪しい真似をしていたのか、それは彼にも判らなかった。
「わしもその後しばらく藻に逢わぬが、毎晩そのようなことをしているのであろうか」と、千枝松は心もとなげに婆に訊いた。
「わしも知らぬ。わしの見たのはただ一度じゃ。なぜそのようなことをしていたのか、お前逢うたらきいてお見やれ」
「はは、なんのむずかしく詮議することがあろうか」と、翁は急に笑い出した。「宵の薄暗がりで婆めが何か見違えたのじゃ。さもなくば、人の見ぬ頃をはかって、そこらの川へ捨てに行ったのであろう。髑髏を額にかざして冠《かんむり》にもなるまいに。ははははは」
 むぞうさに言い消されて、婆は躍気《やっき》となった。彼女は手真似をまぜてその時のありさまを詳しく説明した。その間に彼は幾たびか柴の煙りにむせた。
「なんの、わしが見違えてよいものか。藻はたしかに髑髏を頭に頂いていたのじゃ」
「こりゃじい様のいう通り、なにかの見違えではあるまいかのう」と、千枝松は不得心らしい顔をして側から喙《くち》をいれた。
 左右に敵を引き受けて、婆はいよいよ口を尖らせた。
「はて、お前らは見もせいで何を言うのじゃ。わしはその場へ通りあ
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