ように訊いた。
「身分は論ぜぬと申しながら、いらぬ詮議をするかとも思おうが、これは関白殿下の御覧に入るる歌じゃ。一応は詠人《よみびと》の身分を詮議し置かないでは、わしの役目が立たぬ。父は誰であれ、母は何者であれ、恥ずるに及ばぬ。憚るにおよばぬ。ただ、正直に名乗ってくるればよいのじゃ」
「母はもうこの世におりませぬ。父の名をあからさまに申し上げませいでは、歌の御披露はかないませぬか」と藻は聞き返した。
「かなわぬと申すではないが、まずおのれの身分を名乗って、それから改めて披露を頼むというがひと通りの筋道じゃ。父の名は申されぬか」
「はい」
「なぜ言われぬ。不思議じゃのう」と、師道はほほえんだ。「ははあ、聞こえた。父の名をさきに申し立てて、もしその歌が無下《むげ》に拙《つたな》いときには、家《いえ》の恥辱になると思うてか。年端《としは》のゆかぬ女子《おなご》としては無理もない遠慮じゃ。よい、よい。さらばわしも今は詮議すまい。何者の子とも知れぬ藻という女子を相手にして、その歌というのを見て取らそう。料紙《りょうし》か短冊《たんざく》にでもしたためてまいったか」
「いえ、料紙も短冊も持参いたし
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