いて、しかもその尾は九つに裂けていたそうな」
 四十前後の旅びとは額《ひたい》を皺めて怖ろしそうに語った。それを黙って聴いている若い旅びとは千枝太郎であった。それを語っている旅びとは陸奥《みちのく》から戻って来た金売《かねう》りの商人《あきうど》であった。大きい利根川の水もこの頃は冬に痩せて、限りもない河原の石が青い空の下に白く光っていた。ふたりの旅人はその石に腰をかけて、白昼《まひる》の暖かい日影を背に負いながら並び合っていた。
「それほどの狐であったら、容易に狩り出されそうもないものじゃに……」と、千枝太郎は独り言のように言った。
「なんでも七日あまりはその隠れ場所も知れなんだが、朝から折りおりに陰って大きい霰が降って来た日の午《ひる》過ぎじゃ」と、金売りの商人は語りつづけた。「どこからとも知れずに一本の白い幣束《へいそく》が宙を飛んで来て、薄《すすき》むらの深いところに落ちたかと思うと、人も馬も吹き倒すような怖ろしい風がどっと吹き出して、その薄むらの奥からかの狐があらわれた。それを三浦と上総の両介どのが追いすがって、犬追《いぬお》う物《もの》のようにして射倒されたということじゃが
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