日目の午《ひる》すぎに、千枝太郎は七条へ忍んで行って三浦の宿所の門前に立つと、彼は小源二から思いも寄らない報告をうけ取った。
「お身はまだ知らぬか。衣笠どのはおとといの夜にむなしくなられた」
「衣笠どのが亡《う》せられた……」
千枝太郎は声も出ないほどに驚いた。小源二の話によると、祈祷の夜の亥《い》の刻ごろ、泰親がかの黒髪を火に燃やしたと恰《あたか》もおなじ頃に、彼女はにわかにこの世を去ったというのであった。屋敷じゅうの男どもはみな主人の供をして山科郷へと向かっていた留守であるから、詳しいことは確かにわからないが、そのときかの怪しい上臈が再び庭さきに姿をあらわしたと侍女《こしもと》どもはささやいていた。
「じゃによって、われらが案ずるには、かの玉藻めが殿様のお留守を窺って、衣笠殿に祟ったのではあるまいか。彼女《かれ》めが正体をあらわして飛び去るときに、憎いと思うものをとり殺していく。それはさもありげなことじゃが、なぜそれほどに衣笠どのに執念《しゅうね》く禍いするか、それが判らぬ。殿様|以《も》ってのほかの御愁傷で、よその見る目もおいたわしい。こうと知らば大切の孫娘をわざわざ都までは連
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