しまった。大殿《おおとの》にはそれを聞こしめされて、この古屋敷は変化《へんげ》の住み家《か》とみゆるぞ、とく狩り出せよとの下知にまかせて、われわれ一同が松明《たいまつ》振り照らして、床下から庭の隅《すみ》ずみまで隈なくあさり尽くしたが、鼬《いたち》一匹の影すらも見付からなんだ。思えば不思議なことよのう。気の弱い侍女どもばかりでなく、衣笠どのの眼にまでも、ありありと見えたとあるからは、臆病者のうろたえた空目《そらめ》とばかりも言われまいよ」
夢のような心持で、千枝太郎はこの話を聴いていると、小源二はまた言った。
「就いては大殿のお使いで、おれはけさ早う土御門《つちみかど》へ行って、安倍泰親殿の屋敷をたずねた」
「おお、土御門へ行かれたか。して、播磨守殿はなんと占《うらな》われた」と、千枝太郎は訊いた。
「播磨守殿は慎みの折柄《おりから》じゃとて、直きじきの対面はかなわなんだが、弟子の取次ぎでこれだけのことを教えてくれた。御息女には怪異《あやかし》がついている。三七日《さんしちにち》のあいだは外出は勿論、何者にも御対面無用とのことじゃ。右様《みぎよう》の次第じゃで、見識らぬ者どもは当分御
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