合った。
「では、一緒に来やれ。屋敷はすぐそこじゃ」
誰やらの空き屋敷を仮りの宿所にあてているらしく、構えの大きい割には屋敷の内もひどく荒れて、うす暗い庭には秋草がおどろに乱れてそよいでいた。遠侍《とおざむらい》らしいところに、七、八人の家来が武者あぐらを掻いていた。小源二は千枝太郎を彼らに引き合わせて、再び表へ出て行った。
主人は留守で、用のない家来どもは退屈しているらしく、千枝太郎を相手にして京の名所や風俗の噂などを聴いた。そのなかには烏帽子をあつらえる者もあった。千枝太郎は仕事をしながら一生懸命に彼らの機嫌を取っていると、正直な坂東の男どもは馴染みのうすい烏帽子折りをひどく信用してしまって、何もかも打ち明けて話した。そのうちに衣笠の噂も出た。
「その娘御《むすめご》は世に美しいお方じゃそうに承りました。きょうもお宿でござりまするか」と、千枝太郎は訊いた。
「おお、奥にござるよ」と、一人が言った。「どうじゃ、そちも奥へまいってお目見得せぬか。女儀《にょぎ》のことじゃで毎日出歩きもならぬ。さりとて初めてのお上《のぼ》りじゃで別に親しい友達もない。侍女《こしもと》どもばかりを相手に
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