で相模一国にならぶかたもない美女である。祖父の義明がこのたびの上洛について、可愛い孫娘にも一度は都の手振りをみせて置きたいという慈愛から、遠い旅をさせて一緒に連れて来たが、なるほど花の都にもあれほどの美女は少ない。自分も主人の供をして、毎日洛中洛外を見物してあるいているが、衣笠殿ほどの美しい女子《おなご》に殆んど出逢ったことがない。当時都で噂の高い玉藻の御《ご》というのはどんな人か知らないが、おそらくそれにも劣るまいとのことであった。
田舎侍の主人自慢はめずらしくない。しかしその話を半分に聴いても、三浦の孫娘がすぐれた美女であるらしいことは千枝太郎にも想像された。年の若い烏帽子折りはその美しい相模おんなを一度見たいような浮かれ心にもなった。
「三浦殿の御家来衆は大勢《おおぜい》でござりまするか」と、彼は訊いた。
「上下二十人で、ほかに衣笠殿と附き添いの侍女《こしもと》が二人じゃ」
「二十人の御家来衆とあれば、烏帽子の御用もござりましょう。して、お宿は……」
「七条じゃ。時どきに来て見やれ」
「その折りにはよろしく願いまする」
千枝太郎は彼と約束して別れた。家へ帰ってきょうの話をする
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