匠でないのを知っているので、彼はすごすごとそこを立ち退いて昔の山科の家に戻った。
 戻ってみると、叔父や叔母の老いの衰えが今さらのように彼の眼についた。千枝太郎は悲しくなった。師匠の勘当をうけて来た甥を叔父や叔母はさのみ叱りもしないで、かえって懐かしそうに迎えてくれたので、彼はいよいよ涙ぐまれた。足かけ五年のあいだ、師匠の教えをうけた学問はありながら、勘当された今の身の上では、それを表向きの職として世に立つことは出来ない。さりとてもう一人前の若い者が、手を袖にして叔父や叔母の厄介にもなっていられないので、差しあたっては昔の烏帽子折りに立ちかえって、ちっとでも叔父の手助けをしたいと彼は思った。叔父も喜んで承知した。千枝太郎はその以来、叔父と一緒に商売《あきない》に出ることもある。自分ひとりで出ることもある。こうしてもう小ひと月を送っているうちに、彼もだんだんに仕事に馴れて来て、朝に家《うち》を出て暮れ方に戻れば、きっと幾らかの銭を持って来るので、年をとった叔父や叔母はよい稼ぎ人の戻ったのを、むしろ喜んでいるくらいであった。
 これがおれの運かもしれない。せめてこうしているあいだに精ぜい働
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