おそばにいてはわしのためにならぬ。家《うち》へ帰れと仰せられた」
「なぜかのう」と、翁は再び首をかしげた。「じゃが、お師匠さまがそう言わるれば、それも是非ない。して、これからはどうおしやる。叔父御も次第に年が寄って、この頃は思うように稼業もならぬと言うていた。お前の戻って来たは丁度幸いかもしれぬ。若い者はせいぜい働いて、叔父御や叔母御に孝行おしやれ。のう」
「おお、わしもそのつもりでこの頃は稼ぎに出る。あれを見やれ」
彼は表を指さすと、門口《かどぐち》に烏帽子折りの荷がおろしてあった。翁はうなずいた。
「おお、よい、よい。昔の千枝ま[#「ま」に傍点]とは違うて、今では立派な若い男じゃ。まして子供の時から習いおぼえた職もある。怠らず稼いだら不自由はせぬ筈じゃ」
物に屈託しない翁は心から打ち解けたような笑顔を見せて、昔の千枝ま[#「ま」に傍点]と懐かしそうに話していた。千枝太郎もなつかしそうな眼をして家の中を見まわすと、今向かい合っている小さい窯《かま》も、奥に切ってある大きい炉《ろ》も、落ちかかっているように傾いた棚も、すべて昔のさまとちっとも変わっていなかった。秋の日を浴びている翁
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