げ》ばらや生官人《なまかんにん》どもとは違って、少納言入道信西は博学宏才を以って世に認められている。殊更に党を組み、ひとにおもねって、自分の地位にかじり付いている必要はない。忠通が勝っても、頼長が勝っても、あるいはこの兄弟が相討ちになっても、自分の地位は容易に動かないものと彼はみずから信じていた。
 こうした強い自信をもっている彼の眼から観れば、どちらの味方をして働くのも無用の努力であるように思われた。彼はなるべく事なかれ主義を取って頼長と忠通とのあいだを弥縫《びほう》するか、もしそれが出来そうもないと見きわめた暁《あかつき》にはそっと手を引いて、両方の争いを遠く見物しているのが、最も賢い、最も安全の処世法であるように思われた。しかしこの場合、結局黙っては済まされないとみて、老獪《ろうかい》の彼は巧みに逃げを打った。
「さりながらその禍いがすでにあらわれましたる以上は、まずそれを鎮むる工夫が先きでござりまする。その禍いを見て諸人が悔いあらたむれば天下はおのずから泰平、二度の禍いのあらわりょう筈はござりませぬ」
「それもそうじゃな」と、頼長は渋《しぶ》しぶうなずいた。彼も差しあたってはそ
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