なんとか穏便《おんびん》の沙汰をと工夫しておったる折りからじゃ。彼が二度の祈祷を願うとあれば猶更のこと、なんとかして彼を救わねばなるまい。して、関白殿よりは今になんの沙汰もないか」
「なんの御沙汰もござりませぬ」
「それは重畳《ちょうじょう》。関白殿も本来は賢い御仁じゃで、無道の御沙汰もあるまいと存ずるが、なにをいうても今は悪魔に魅《みい》られているので、いかようの御沙汰もあろうかと、それがしも内《ない》ない懸念しておったが、今になんの御沙汰もなくば、存外穏便に済もうも知れぬ。いずれにしても信西が引き受けた。播磨守にも安心せいと伝えてくりゃれ」
 関白殿からなんの御沙汰もないのは、かの玉藻の取りなしであることを知っていたが、千枝太郎は、この人の前でもそれを明白《あらわ》に言うのを憚った。彼はうやうやしく礼をいって、信西の屋敷を出ると、月はいよいよ明るくなって、路ばたになびく柳の葉も一いちかぞえられる程であった。
 姉小路を出て、高倉の辻へさしかかると、ゆき先きで犬のほえる声がきこえた。気にも留めずに歩いてゆくと、犬の声はそこにもここにも聞こえた。それは唯ならぬ唸り声であった。
「盗賊か
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