》を平びたいにかざしていた。五つ衣《ぎぬ》の上衣《うわぎ》は青海波《せいがいは》に色鳥の美しい彩色《つくりえ》を置いたのを着て、又その上には薄萌黄《うすもえぎ》地に濃緑《こみどり》の玉藻をぬい出した唐衣《からごろも》をかさねていた。彼女は更に紅打《べにう》ちの袴をはいて、白地に薄い黄と青とで蘭菊の影をまぼろしのように染め出した大きい裳《も》を長く曳いていた。あっぱれ采女のよそおいである。頼長はそれをひと目見て、彼女の僭上《せんじょう》を責めるよりも、こうした仰々《ぎょうぎょう》しい姿にいでたたせた兄忠通の非常識に対して十二分の憤懣《いきどおり》を感じた。
 しかし今はそれを論議している場合でないので、頼長も信西も黙ってその成り行きをうかがっていると、玉藻は関白家の侍どもに護られて、しずかに壇のそばへ歩み寄ったかと思うと、彼女はたちまち顔色を変えた。彼女はなんにも言わずにそのまま引っ返そうとした。
「玉藻の御《ご》、お待ちゃれ」
 泰親は壇の上から声をかけた。これを耳にもかけない様子で、玉藻はあくまでも引っ返して行こうとするらしいので、堪えかねて頼長も呼び止めた。
「玉藻、なぜ戻る。午の
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