て白く見られた。
 雨乞いの祈祷は巳《み》の刻(午前十時)を過ぎても何の効験《しるし》も見えなかった。壇のまわりには北面《ほくめん》の侍どもが弓矢をとって物々しく控えていた。左大臣頼長を始めとして、あらゆる殿上人《てんじょうびと》はいずれも衣冠《いかん》を正しくして列《なら》んでいた。岸の両側の大路小路も見物の群れで埋められていた。これらの幾千の人びとはいずれも額に汗をにじませながら、白く灼けている空を不安らしく眺めていたが、空は面憎《つらにく》いほど鎮まり返って、鳥一羽の飛ぶ影すらも見えなかった。
「やがてふた※[#「※」は「日へんに向」、読みは「とき」、157−6]《とき》にもなろうに、雲一つ動きそうにも見えぬではないか」
「祈祷は午の刻までじゃという。それまで待たいでは奇特の有無はわかるまいぞ」
 こんなささやきが見物の口々から洩れた。あまたの殿上人の汗ばんだ眉のあいだに、不安の皺がだんだんに深くなってきた。しかし頼長は騒がなかった。泰親がきょうの祈祷の趣意は雨乞いではない。玉藻の前に対する悪魔調伏の祈祷である。頼長や信西の側からいえば、雨の降ると降らぬとは問題でない。泰親はもと
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