道の屋形へまいって、別室で入道に対面し、世におそろしいことを密々に訴えたそうじゃ。関白殿が俄に人数を召されて、宇治の左大臣と少納言入道とを一ッ時に誅伐せらるるお催しがあると申すのじゃ。入道殿ほどの御仁《ごじん》がそのような讒口《ざんこう》を真《ま》に受けらるる筈はなし、且《かつ》は日頃から疑いの眼を向けている玉藻の訴えじゃで、まずよいほどに会釈して追い返されたそうなが、こちらへ来てそれほどのことを言う奴、あちらへ参っても又どのような讒口を巧《たく》もうやら。返すがえすも怖ろしい。しょせん彼女《かれ》めはさまざまに手を換え品をかえて、人間に禍いの種をまき、果ては天下の乱れを惹《ひ》き起こそうとするにきわまった。まだそればかりでない。かれは関白殿をそそのかして、采女に召さりょうという大望を起こしたという。勿論、左大臣殿にさえぎられて、いったんは沙汰やみになったと申すが、かれのごとき魔性の者が万一、殿上に召さるるなどの事あっては、わが日の本は暗闇じゃ」
 もうどうしても猶予は出来ないので、信西入道と相談の上で、自分はきょうから身を浄《きよ》めて七十日の祈祷《いのり》を行なうことにきめた。左大
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