てはむごたらしいなぶり殺しに逢おうも知れまいという怖れもまじって、彼は足もとに転げている河原の小石をさぐり取って、相手の顔と思うあたりへ三つ四つ投げ付けた。そのうろたえる隙《すき》をみて、彼は飛び起きて逃げようとするのを、実雅はすぐに追い掛けて再びその襟髪を掴んだ。
 嫉妬と憤怒《ふんぬ》にのぼせているところへ、小石の痛い眼つぶしを食わされて、実雅はまったく眼がくらんでしまった。彼は再び恋のかたきを蹴倒して、腰に佩《は》いている衛府《えふ》の太刀に手をかけたかと思うと、闇にきらめいた切っ先は兼輔の烏帽子をはた[#「はた」に傍点]と打ち落として、その小鬢《こびん》を斜めにかすった。
「わッ、人殺しじゃ」
 その声の消えないうちに、二度目の太刀さきは兼輔の頸のあたりを横に払ったので、彼は息もせずにそこにぐたりと倒れた。実雅は片足でそれを二、三度揺り動かしてみたが、兼輔は石のように転《まろ》ばったままで、再び身動きをしそうもなかった。
「はは、もろい奴じゃ。おのれその醜態《ざま》で、実雅の悪口いうたか」
 彼は勝利の満足をおぼえると同時に、一種の不安と後悔とが急に湧き出して来た。死人に口なし
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