で、五、六間も行き過ぎて又見返ると、彼はまだ行きもやらじに立ち明かしている。さてはここに連れの人を待ち合わせているのかと思うと、すぐに覚ったは玉藻の御《ご》、お身のことじゃ。それから足を早めてここの門前へ来て、さっきから出入りを窺うていたとは知らぬか。さあ真っ直ぐに言え、白状せられい」と、実雅ははずむらしい息を努めて押し鎮めて、女の細い腕を揺すぶりながら訊いた。
「そう知られては隠しても詮《せん》ないこと。まこと今宵は左少弁殿と言いあわせて、法性寺詣でに忍び出たに相違ござりませぬ」
「むむ。相違ないか」と、大きいからだをふるわせて実雅は唸った。「お身は先月も兼輔めと連れ立って法性寺へまいったというが、確かにそうか」
 それも嘘ではないと玉藻は答えた。しかしそれは隆秀阿闍梨の教化をうけたいために兼輔の案内を頼んだので、ほかには別に子細はないと言ったが、実雅は素直にそれは肯《き》き入れなかった。現にこのあいだの花の宴《うたげ》にも、自分は彼と玉藻との密会を遠目に見ている。今更そんなあさはかな拵え事で、自分を欺くことはできまいと又あざ笑った。
「就《つ》いては、少将実雅があらためてお身に訊き
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