身は途中で誰に行き逢うた」
 千枝太郎はぎょっとした。しかも何事にも見透しの眼を持っている、神のような師匠の前で、彼はいつわりを言うべきすべを知らなかった。彼は河原で玉藻の藻《みくず》に偶然出逢ったことを正直に白状すると、泰親は低い溜息をついた。
「わしもそう見た。お身は再び怪異《あやかし》に憑かれたぞ。心《こころ》せい」
 言い知れない恐怖におそわれて、千枝太郎は息をつめて身を固くしていると、泰親はあわれむように、また諭《さと》すように言い聞かせた。
「お身はあやかしに一度|憑《つ》かれて、危うく命を亡《うしな》おうとしたことを今も忘れはせまい。その後は一心に修業を積んで、年こそ若けれ、ゆくゆくは泰親の一の弟子とも頼もしゅう思うていたに、きょうは俄にお身の相好《そうごう》が変わって見ゆる。みだりに嚇《おど》かすと思うなよ。お身のおもてには死の相がありありと現われているとは知らぬか。お身をいとしいと思えばこそ、泰親かねて存ずる旨をひそかに言うて聞かすが、誓って他言無用じゃぞ」
 くれぐれも念を押しておいて、泰親は日ごろ自分の胸にたくわえている一種の秘密を打ち明けた。それはかの玉藻の身の
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