はお身も大かた存じておろう。彼は才智に慢ずる癖がある。この上に学問させたら、彼はいよいよ才学に誇って、果ては天魔《てんま》に魅《みい》られて何事を仕いだそうも知れまい。学問はやめいと言うてくれ。しかと頼んだぞ」
実をいえば、信西も頼長に対してそういう懸念がないでもなかった。才学非凡で、しかも精悍《せいかん》の気に満ちている頼長の前途を、彼もすこしく不安に感じているのであった。この意味に於いては、彼も忠通の意見に一致していた。しかし今夜の忠通の口吻《くちぶり》は、弟の行く末を思う親身の温かい人情から溢れ出たらしく聞こえなかった。
兄弟の不和――それから出発して来た兄の憤恚《いかり》であるらしいことを、古入道の信西は早くも看《み》て取った。
「仰せ一いち御道理《ごもっとも》にうけたまわり申した。それがしよりもよくよく御意見申そうなれど、あれほど御執心の学問をやめいとは……」
「申されぬか」
相手は眼を薄くとじたままで、やはり否とも応ともはっきりとした返事をあたえないので、忠通はいよいよ焦《じ》れ出して、彼が天魔に魅《みい》られているという現在の証拠を相手の前に叩き付けようとした。
「
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