眼を伏せる。)
[#ここで字下げ終わり]
半七 今夜の小道具の損料屋さんはいますかえ。
五助 (ぎょっとして。)はい、はい。わたくしでございます。
半七 この本身はおめえが持って来たのかえ。
五助 それを旦那からも御詮議でございましたが、わたくしは決してそんなものを持って来た覚えはございません。ねえ、三津平さん。
三津平 わたしも皆さんの顔をこしらえに来て、舞台の上のことも何やかやとお世話をしているので、衣裳や持物はみな一と通り調べましたが、五助さんの持って来た大小は金貝張りで、決して本身ではなかったのでございます。
半七 それがいつの間にか本身に変っていたのか。(再び一座を見まわして考えている。)
三津平 今も云っているところですが、どうも魔がさしたとしか思われませんよ。
半七 まったく魔がさしたのかも知れねえな。(刀をながめて再び考えている。)
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(下のかたより角太郎の妹おてる、十六七歳。仲ばたらきお冬、十七八歳。あわてていず。)
[#ここで字下げ終わり]
おてる もし、兄《にい》さんがどうかしたのかえ。
お冬 若旦那様がお怪我をなすった
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