ってありますね。
伝兵衛 (面喰らって。)はい。
半七 はは、犬っころじゃあ判るめえ。男の奉公人のことさ。その犬っころが何匹いるんだよ。
伝兵衛 はい。
半七 小じれってえな。はっきりと返事をしろ。まさかに五百羅漢ほどに鼻をそろえている訳でもあるめえ。考えずともすぐに判る筈だ。
十右衛 (見かねて。)ここの家《うち》の奉公人は若い者が十二人、小僧が五人でございます。
半七 白雲《しらくも》あたまの小僧なんぞに用はねえ。大きい犬っころ十二匹をみんなここへ引っ張り出してください。
十右衛 はい。(伝兵衛と顔をみあわせる。)
半七 とんだ寺子屋だか、一匹ずつに首実験だ。早く引摺って来てください。
十右衛 はい、はい。
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(十右衛門は仕方がないから早く呼んで来いと眼で知らせれば、弥助は心得て店さきに立出で、上のかたに向って呼ぶ。)
[#ここで字下げ終わり]
弥助 おい、おい。誰かいないか。
庄八 はい。はい。
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(上のかたより庄八出で、十右衛門と半七を見てあわてて会釈する。)
[#ここで字下げ終わり]
弥助
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