りではない。若い者や女中たちにも今後決して忠臣蔵の噂をしてはならないと、かたく云い渡して置くがいいぜ。
弥助 はい、はい。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(三人は再び帳面や十露盤にむかっている。向うより半七は着物を着かえて草履をはき、酒に酔いたるていにていず。あとより十右衛門が附添っていず。)
[#ここで字下げ終わり]
十右衛 (不安らしく。)もし、親分さん。大丈夫でございますかえ。
半七 なにが大丈夫だ。神田から京橋まで、この通り真直ぐにあるいて来たじゃあねえか。(云いながらよろよろする。)
十右衛 もし、あぶのうございます。
半七 なにがあぶねえのだ。あぶ[#「あぶ」に傍点]がなければ蜂もねえや。はははははは。まあ、そんな理窟じゃあありませんかえ。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(半七はよろよろしながら店さきに来る。十右衛門は困った顔をして、附いて来る。)
[#ここで字下げ終わり]
弥助 おお、露月町の旦那様でございましたか。
和吉 いらっしゃいまし。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(半七はよろけながら店先に腰をかける。十右衛門は立っ
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