、やれ、きょうは朝からお小言の続け玉だ。
小僧二 定九郎なら二つ玉だが、つづけ玉じゃあ全くやりきれねえ。
小僧三 定九郎ならまだしもだが、勘平と来た日にゃあ大変だ。
長次郎 (叱る。)これ、大きな声でそんなことを云うな。
庄八 大旦那やおかみさんにきこえたら、それこそ大変だぞ。
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(小僧共も首を縮めて口をおさえる。)
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長次郎 さあ、早くしろ、早くしろ。
庄八 四五日商売を休んだので、みんな怠け癖が附いてしまやあがった。
小僧 (声をそろえて。)さあ、さあ、早くしろ。
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(庄八と長次郎も手伝いて、小僧共は金物類を上のかたへ重そうに運んでゆく。)
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伝兵衛 (あとを見送って舌打ちする。)小僧どもは碌なことを云わない。定九郎だの勘平だのと、そんな噂は禁物だ。
弥助 大旦那やおかみさんはもう忠臣蔵の芝居は一生見ないと云っておいでですよ。
伝兵衛 まったくお察し申すよ。わたしももう忠臣蔵は見たくない、あの晩のことを思い出すと、今でもぞっとするようだ。小僧共ばか
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