。)まあ、ようございます。それじゃあ、旦那。これからわたくしは具足町のお店へ出かけましょう。
十右衛 すぐにお出かけ下さいますか。
半七 下手の考え休むに似たりとか云いますから、思い立ったらすぐに取りかかって、なんとか早く埒をあけてしまいましょうよ。ぐずぐずしていると色々の面倒が起りますからね。
十右衛 では、もうお見込みが付きましたか。
半七 さあ。(笑って。)まだどうなるか判りませんが、あらましの段取りは附いたようです。
十右衛 (やや不安らしく。)そこで、そのお見込みはどういうことに決まりましたのでございましょうか。
半七 それは聞かないでください。この芝居も幕をあけてみなければどうなるか判らねえ。下手にやり損じると、今度は半七が腹を切らなければなりませんからね。
十右衛 でも、わたくしだけには御内々で……。決して他言いたしませんから。
半七 地獄極楽の区ぎり目の付くまでは、素人衆はまあ黙って見ておいでなさい。
十右衛 はい。(よんどころなく黙っている。)
半七 (かんがえる。)いや、そうでもねえ。おまえさんは味方に抱き込んで置く方が都合がいいかな。時に旦那はお酒をあがりますかえ
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