す。
半七 なにしろこっちへ通すがいい。
亀吉 (入口へ来て。)さあ、どうぞ。
十右衛 ごめん下さい。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(十右衛門は丁寧に会釈して内に入る。亀吉は手あぶり火鉢を出し、茶の支度をする心で台所に入る。)
[#ここで字下げ終わり]
半七 わたくしが半七でございます。
十右衛 手前は大和屋十右衛門、どうぞ御見識り置きをねがいます。
半七 どうぞお楽においで下さい。
十右衛 はい、はい、有難うございます。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(十右衛門は自分の用向きを云い出し兼ねて、もじもじしている。おみのは茶を持っていず。)
[#ここで字下げ終わり]
十右衛 どうぞもうお構い下さいますな。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(おみのは台所に入る。)
[#ここで字下げ終わり]
十右衛 (やはりもじもじして。)まことに結構なお住居でございますな。
半七 野郎共が大勢ごろごろしていて男世帯も同様ですから、家のなかは散らかし放題、一向にだらしがございません。
十右衛 いえ、よくお綺麗に片附いて居ります。
[#ここから改行天付き、折り返
前へ 次へ
全64ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング