》さん。兄さんがあんなに受合ってくれたんですから、きょうはこれで帰ろうじゃありませんか。ね、そうおしなさいよ。さあ、いきましょうよ。
文字清 でも、親分さんは何だかわたしの云うことを本当にしてくれないようですから。(又泣く。)
半七 それもこれも長い目で見ていれば自然に判ることだ。あんまり世話を焼かせねえで素直に帰りなせえ。(おくめに。)さあ、早く連れていけ。
おくめ さあ、おまえさん。(文字清の手をとる。)帰りましょうよ。
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(文字清は無言で泣きながら起ち上がる。おくめは労わるようにして表へ連れ出してゆく。)
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半七 おい、ちょっと待て。おまえ一人じゃあちっと不安心だ。野郎を誰か送らせてやろう。亀のほかに幸次郎がいる筈だ。(二階にむかいて。)おい、幸次郎。来てくれ。
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(二階より子分の幸次郎いず。)
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幸次郎 なんですね。
半七 妹と一緒にあの師匠を送って行ってくれ。大分のぼせているようだから気をつけろ。
幸次郎 わかりました。(すぐに表へ来る。)
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