せえ。
文字清 じゃあ、親分はまだわたくしの云うことを本当にしちゃあ下さらないんですか。
半七 その本当か嘘かを調べているのだ。まあ、まあ、せいちゃあいけねえ。
文字清 きっと調べて下さいますか。
半七 おまえさんに頼まれないでもわたしの役目だ。きっと調べてあげますよ。
文字清 いくら自分の子になっているからと云っても、角太郎を殺したおかみさんは、よもや無事じゃあ済みますまいね。お上できっとかたきを取って下さるでしょうね。
半七 そりゃあ知れたことさ。
文字清 それでもあのくらいの大きい家《うち》になると、内証で色々に手をまわして、いい加減に揉み消してしまうというじゃあありませんか。
半七 (笑う。)それも事による。いくら金を使っても、手をまわしても、人殺しが滅多に帳消しにゃあならねえから、まあ、安心していなさるがいい。
文字清 大丈夫でしょうか。
半七 大丈夫だよ。
文字清 受合いますか。
半七 受合うよ。
文字清 そんならいっそすぐに行ってください。
半七 え、どこへいくのだ。
文字清 これからすぐに和泉屋へ行って、あのおかみさんを召捕ってください。
半七 (又笑う。)はは、そんな
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