のだぞ。
小僧一 あい、あい。(下のかたへ出てゆく。)
伊之助 小僧さんひとりが行ったのじゃあ判らないかも知れない。誰か若い衆さんをやったらどうだね。
長次郎 じゃあ、いっそわたしが行って来ましょう。(起ちかかる。)
三蔵 正直に若旦那が大怪我をしましたからと云った方がいいかも知れないぜ。
庄八 そうだ、そうだ。怪我人は若旦那だと正直に云った方がいいよ。
長次郎 わかった、わかった。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(長次郎はあわてて出てゆく。)
[#ここで字下げ終わり]
三津平 なにしろ飛んでもないことになったものだね。
五助 どうしてこんなことになったのか、夢のようでさっぱり判らねえ。
三津平 わっしにも判らねえ、どうも不思議だよ。魔がさしたのかも知れねえぜ。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(下のかたの襖をあけて、和泉屋の主人与兵衛、四十七八歳、あわただしくいず。)
[#ここで字下げ終わり]
与兵衛 もし、せがれがどうしました。
伊之助 思いもよらないことが出来《しゅったい》して、みんなも呆気《あっけ》に取られているばかりです。
与兵衛 一体どうしたと
前へ
次へ
全64ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング