遠慮なしにおはいんなさいよ。
文字清 はい。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(台所より女中おみのが出て、手あぶりの火鉢に火を入れたりする。おくめと文字清は内に入りて坐る。奥より廻り縁づたいに半七いず。)
[#ここで字下げ終わり]
半七 やあ、大層早いな。(長火鉢の前に坐る。)おい、おみの。なんだかお連れさんがあるようだぜ。茶を入れる支度でもしろ。
おみの はい、はい。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(おみのは手あぶりを二人の前に置いて、奥に入る。)
[#ここで字下げ終わり]
おくめ 姉さんはいつも御信心ね。
半七 じゃあ、もう亀から聞いたか。きょうは十五日で深川へ朝まいりよ。時にそっちのお客様にはまだ御挨拶をしねえが、どなただね。
文字清 (すすみいず。)申しおくれて相済みません。わたくしは下谷に居ります文字清と申しますもので、こちらの文字房さんには毎度お世話になって居ります。
半七 いえ、どう致しまして……。おくめこそ年がいきませんから、さぞ色々と御厄介になりましょう。この後《のち》も何分よろしくおねがい申します。
おくめ そこで早速ですがね。この文字
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