。)どうしました、どうしました。
半七 ああ、いけねえ、いけねえ。むやみに這入り込んで荒しちゃあいけねえ。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(半七は片手に刀を持ち、片手で大勢を制する。おてるとお冬は角太郎を取りまいて泣いている。)
[#ここで字下げ終わり]
男乙 でも、若旦那が倒れているようだ。
女甲 ほんとうにどうなすったのだろうねえ。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(大勢はがやがや云いながら覗こうとする。)
[#ここで字下げ終わり]
半七 ええ、うるせえな。斬るよ、斬るよ。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(半七は持っている刀をふりまわせば、人々はおどろいてあとへ退《さが》りながら、まだがやがや云っている。)
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]――幕――

 第二幕

[#ここから1字下げ]
神田三河町、半七の家。ここは茶の間で、小綺麗に片附けられ、拭き込んだ長火鉢や、燈明のかがやく神棚などがある。庭には小さい池がある。壁には子分等の名前をかきたる紙を貼り附け、それにめいめいの十手《じゅって》がかけてある。次の間の正面は障子、その外に
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