しも見せて貰いましたが、まったく好く出来ているように思われました。職人たちも感心していました。木地《きじ》は桂だろうということでした。」
「二つの人形は何を彫ったのですか。」
「それがまた怪奇なもので、どちらも若い女と怪獣の姿です。」
「怪獣……。」
「怪獣……。むかしの神話にも見当らないような怪獣……。むしろ妖怪といった方が、いいかも知れません。その怪獣と若い女……。こんな彫刻を写真に撮って、あなたの新聞にでも掲載してごらんなさい。たちまち叱られます。それで大抵はお察しくださいと言うのほかはありません。実に奇怪を極めたものです。そこで当然の問題は、いったい誰がこんな怪しからん物をこしらえて、この天井裏に隠して置いたかということですが……。あなたは誰の仕業《しわざ》だと鑑定します。」
「朝鮮だとか琉球だとかいう若い大工でしょう。」と、私はすぐに答えた。
「誰の考えも同じことですね。」と、博士はうなずいた。「あなたの鑑定通り、それは西山という若い大工の仕業に相違ないと、諸人の意見が一致しました。娘たちに挑《いど》んで、親方に殴られて、それから三晩ほどは外出して、いつも夜が更けて帰って来た
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