の醜態を世間に暴露するに至ったのは、少しく不思議である。
「親たちはそれを打っちゃって置くのですか。」
「いえ、親たちも兄さん夫婦もひどく心配して、初めのうちは叱ったり諭《さと》したりしていたのですが、姉も妹も肯《き》かないのです。なにしろ人間がまるで変ってしまったのですから……。」と、小使は嘆息するように言った。「あれだけの大きい店でもあり、旧家でもあり、お父さんは町長を勤めたこともある位ですから、その家の娘たちが色気違いのようになってしまっては、世間へ対しても顔向けが出来ません。曽田屋でも困り抜いた挙げ句に、姉は小倉にいる親類に預け、妹は久留米の親類にあずける事にしたのですが、それが又いけない。行く先ざきで男をこしらえて……。それも決まった相手があるならまだしもですけれど、学生だろうが、出前持だろうが、新聞売子だろうが、誰でも構わない。手あたり次第に関係を付けて、人の見る眼も憚《はばか》らずにふざけ散らすというのですから、とてもお話になりません。預けられた家でも呆れてしまって、どこでも断わって返して来る。そうかといって、ほかには変ったことも無いので、気違い扱いにして、病院へ入れるわ
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