我家の園芸
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)種蒔《たねま》き

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二十種|乃至《ないし》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)へちま[#「へちま」に傍点]
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 目黒へ移ってから三年目の夏が来るので、彼岸過ぎから花壇の種蒔《たねま》きをはじめた。旧市外であるだけに、草花類の生育は悪くない。種をまいて相当の肥料をあたえておけば、先《ま》ず普通の花はさくので、我々のような素人《しろうと》でも苦労はないわけである。
 そこで、毎年慾張って二十種|乃至《ないし》三十種の種をまいて、庭一面を藪のようにしているのであるが、それでは藪蚊の棲家《すみか》を作る虞《おそ》れがあるので、今年はあまり多くを蒔かないことにした。それでもへちま[#「へちま」に傍点]と百日草だけは必ず栽《う》えようと思っている。
 私はむかしの人間であるせいか、西洋種の草花はあまり好まない。チューリップ、カンナ、ダリアのたぐいも多少は栽えるが、それに広い地面を分譲しようとは思わない。日本の草花でも優しげな、なよ
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