研究の傍らに探偵方面にも興味を持ちまして、この頃はぼつぼつその方面の研究にも取りかかっております。もちろんそれも怪談に縁のないわけではなく、いわゆる怪談と怪奇探偵談とは、そのあいだに一種の連絡があるようにも思われるのでございます。わたくしが探偵談に興味を持ち始めましたのも、つまりは怪談から誘い出されたような次第でありまして、あながちに本来の怪談を見捨てて、当世《とうせい》流行の探偵方面に早変りをしたというわけでもございませんから、どうぞお含み置きを願いたいと存じます。就きましては、今晩は前回と違いまして、皆様から興味の深い探偵物語をうけたまわりたいと希望しておりますのでございますが、いかがでございましょうか。」
青蛙堂鬼談が今夜は青蛙堂探偵談に変ろうというのである。この注文を突然に提出されて、一座十五、六人はしばらく顔を見合せていると、主人はかさねて言った。
「もちろん、ここにお集まりのうちに本職の人のいないのは判っておりますから、当節のことばでいう本格の探偵物語を伺いたいと申すのではございません。今晩は単に一種の探偵趣味の会合として、そういう趣味に富んだお話をきかして下さればよろし
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