河童小僧
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)流石《さすが》に

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)江戸|邸《やしき》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+(山/而)」、第4水準2−89−92]《はやま》って
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 頃は安政の末、内藤家(延岡藩)の江戸|邸《やしき》に福島金吾という武士があった、この男、剣術柔術が得意で、随って気象も逞しい人物で、凡そ世の中に怖い物無しと誇っていたが、或時測らず一種の妖怪に出逢って、なるほど世には不思議もあるものだと流石《さすが》に舌を巻いたと云う。即ち五月《さつき》の初旬、所謂る降りみ降らずみ五月雨の晴間なき夕《ゆうべ》、所用あって赤阪辺まで出向き、その帰途《かえり》に葵阪《あおいざか》へ差掛ると、生憎に雨は烈しくなった。
 当時の人は御存知あるまいが、其《その》頃は葵阪のドンドンと云っては有名なもので、彼《か》の溜池の流れを引いて漲り落つる水勢すさまじく、即ちドンド
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