一日一筆
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)兜町《かぶとちょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)名優|田之助《たのすけ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「金+奇」、第3水準1−93−23]
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一 五分間
用があって兜町《かぶとちょう》の紅葉屋《もみじや》へ行く。株式仲買店である。午前十時頃、店は掻《か》き廻されるような騒ぎで、そこらに群がる男女《なんにょ》の店員は一分間も静坐《じっと》してはいられない。電話は間断《しきり》なしにチリンチリンいうと、女は眼を嶮《けわ》しくして耳を傾ける。電報が投げ込まれると、男は飛びかかって封を切る。洋服姿の男がふらり[#「ふらり」に傍点]と入って来て「郵船《ふね》は……」と訊《き》くと、店員は指三本と五本を出して見せる。男は「八五だね」とうなずいてまた飄然《ふらり》と出てゆく。詰襟の洋服を着た小僧が、汗を拭きながら自転車を飛ばして来る。上布《じょうふ》の帷子
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