。そのころの江戸には川や古池に大きい山椒魚も棲んでいたらしい。それが風雨《あらし》のために迷い出したので、鱗はなにかほかの魚のものであろうと説明する者もあった。いずれにしても、彼がゆくえ不明になったのは事実である。彼は当時二十八歳で、夫婦のあいだに子はなかった。事情が事情で、急養子の届けを出すというわけにもいかなかったので、その家はむなしく断絶した。



底本:「影を踏まれた女」光文社文庫、光文社
   1988(昭和63)年10月20日初版1刷発行
   2001(平成13)年9月5日3刷
初出:
 新牡丹燈記「写真報知」
   1924(大正13)年6月
 寺町の竹藪「写真報知」
   1924(大正13)年9月
 龍を見た話「週刊朝日」
   1924(大正13)年10月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志、小林繁雄
校正:hongming
2006年1月13日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました
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