マレー俳優の死
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)菜《な》のひたしもの

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)先月|帰朝《きちょう》した

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぞっ[#「ぞっ」に傍点]として
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「海老の天ぷら、菜《な》のひたしもの、蠣《かき》鍋、奴《やっこ》豆腐、えびと鞘豌豆《さやえんどう》の茶碗もり――こういう料理をテーブルの上にならべられた時には、僕もまったく故郷へ帰ったような心持がしましたよ。」と、N君は笑いながら話し出した。
 N君は南洋貿易の用件を帯びて、シンガポールからスマトラの方面を一周して、半年ぶりで先月|帰朝《きちょう》したのである。その旅行中に何かおもしろい話はなかったかという問いに対して、彼はまずシンガポールの日本料理店における食物の話から説き出したのであった。シンガポールには日本人経営のホテルもある。料理店もある。そうして日本内地にある時とおなじような料理を食わせると、N君はまずその献立《こんだて》をならべておいて、それから本文の一種奇怪な物語に取りかかった。


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