の冒険的の興味から三人の兵士がその森林の奥へ踏み込んで行くと、果たしてそこに朱丹の墳墓が見いだされた。入口にはようよう人間のくぐれるくらいの小さい穴があるので、三人は犬のようにその穴からはいって行くと、路はだんだんに広くなると同時に、だんだんに地の底へ降りて行くように出来ていて、およそ五十尺ほども降りたかと思うころに初めて平地に行き着いたといいます。
 あたりはもちろん真っ暗で、手さぐりで辿《たど》って行かなければならない。ここまで来ると、一人の兵士は、急になんだか怖ろしくなって、もうここらで引っ返そうと言い出したが、他の二人はなかなか肯《き》かない。結局その一人が立ちすくんでいるあいだに、二人は探りながら奥の方へ進んで行った。それがいつまで待っても帰って来ないので、一人はいよいよ不安になって、大きい声で呼んでみたが、その声は暗いなかで反響するばかりで二人の返事はきこえない。言い知れない恐怖に襲われて、一人は他の二人の運命を見定める勇気もなしに、早々に元来た路をはいあがって、初めて墓の外の明るい所へ出たが、ふたりはやはり戻って来ないので、とうとう堪まらなくなって森の外まで逃げ出してしま
前へ 次へ
全14ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング