かたき討雑感
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)かたき討《うち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)遺臣|大河次郎重任《おおかわじろうしげとう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぱっ[#「ぱっ」に傍点]
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わが国古来のいわゆる「かたき討《うち》」とか、「仇討《あだうち》」とかいうものは、勿論それが復讎《ふくしゅう》を意味するのではあるが、単に復讎の目的を達しただけでは、かたき討とも仇討とも認められない。その手段として我が手ずから相手を殺さなければならない。他人の手をかりて相手をほろぼし、あるいは他の手段を以て相手を破滅させたのでは、完全なるかたき討や仇討とはいわれない。真向正面から相手を屠《ほふ》らずして、他の手段方法によって相手をほろぼすものは寧《むし》ろ卑怯として卑《いやし》められるのである。
これは我が国風《こくふう》でもあり、第一には武士道の感化でもあろうが、それだけに我がかたき討なるものが甚だ単調になるのは已《や》むを得ない。なにしろ復讎の手段がただ一つしかないと
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