蔵助と荒木又右衛門に株を取られてしまったので、今更どんな掘出し物をしても彼らを凌ぐことはむずかしい。大石には芸州の浅野が附いている、荒木には備前の池田が附いている。こういう大大名《おおだいみょう》のうしろ楯《だて》を持っている彼らのかたき討よりも、無名の匹夫《ひっぷ》匹婦《ひっぷ》のかたき討には幾層倍《いくそうばい》の艱難辛苦《かんなんしんく》が伴っていることと察しられるが、舞台の小さいものは伝わらない。勿論、かれらは名のために仇討をしたのではあるまいが、第三者から見れば何だか気の毒のようにも感じられるのが沢山ある。



底本:「岡本綺堂随筆集」岩波文庫、岩波書店
   2007(平成19)年10月16日第1刷発行
   2008(平成20)年5月23日第4刷発行
底本の親本:「歌舞伎 臨時増刊号」
   1925(大正14)年9月
初出:「歌舞伎 臨時増刊号」
   1925(大正14)年9月
入力:川山隆
校正:noriko saito
2008年11月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全4ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング