》は青表紙の一冊も読んだ者、世に幽霊や妖怪変化があろうとは、どうしても信じられぬが、この一条ばかりは何分にも合点が往かぬ。その亭主も知らず、まして当人は夢にも知らぬ女の姿がありありと眼に映り、しかも小児までがその名を知っていると云うのは、どういう情由《わけ》であろう。実に世には理外の理というものが有るものだと、右の江原が折々に人に語って生涯その疑惑《うたがい》が解《とけ》なかったとの事。
[#地付き](『文藝倶楽部』02[#「02」は縦中横]年4月号)
[#地付き]*不通庵〈妖怪談〉より。筆名は「狂生」使用。



底本:「文藝別冊[総特集]岡本綺堂」河出書房新社
   2004(平成16)年1月30日発行
初出:「文藝倶楽部」
   1902(明治35)年4月号
入力:hongming
校正:noriko saito
2004年8月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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