ってあります。戦争の為《ため》にでなく飢餓の為に全滅《ぜんめつ》するばかりであります。かの巨大なるバナナン軍団のただ十六人の生存者われわれもまた死ぬばかりであります。この際私が将軍の勲章とエボレットとを盗《ぬす》みこれを食しますれば私共は死ななくても済みます。そして私はその責任を負って軍法会議にかかりまた銃殺されようと思います。」
特務曹長「曹長、よく云《い》って呉《く》れた。貴様だけは殺さない。おれもきっと一緒《いっしょ》に行くぞ。十の生命の代りに二人の命を投げ出そう。よし。さあやろう。集まれっ。気を付けっ。右ぃおい。直れっ。番号。」
兵士「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、」
特務曹長「よし。閣下はまだおやすみだ。いいか。われわれは軍律上少しく変則ではあるがこれから食事を始める。」兵士|悦《よろこ》ぶ。
曹長(一足進む。)
特務曹長「いや、盗むというのはいかん。もっと正々堂々とやらなくちゃいけない。いいか。おれがやろう。」
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特務曹長バナナン大将の前に進み直立す。曹長以下これに従い一列に並《なら》ぶ。
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