居りますが結構であります。」
大将「どうじゃ、どれもみんな立派じゃろう。」
一同「実に結構でありました。」
大将「結構でありました? いかんな。物の云いようもわからない。結構でありますと云うもんじゃ。ありましたと云えば過去になるじゃ。」
一同「結構であります。」
特務曹長「ええ、只今《ただいま》のは実は現在|完了《かんりょう》のつもりであります。ところで閣下、この好機会をもちまして更《さら》に閣下の燦爛《さんらん》たるエボレットを拝見いたしたいものであります。」
大将「ふん、よかろう。」
[#ここから2字下げ]
(エボレットを渡す。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
特務曹長「実に甚《はなはだ》しくあります。」
大将「うん。金無垢《きんむく》だからな。溶《と》かしちゃいかんぞ。」
特務曹長「はい大丈夫《だいじょうぶ》であります。後列の方の六人でよく拝見しろ。」(渡す。最後の六人これを受けとり直ちに一箇ずつちぎる。)
大将「いかん、いかん、エボレットを壊《こわ》しちゃいかん。」
特務曹長「いいえ、すぐ組み立てます。もう片っ方拝見いたしたいものであり
前へ 次へ
全20ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング