虔十公園林
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)縄《なわ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五百|杯《ぱい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#小書き平仮名ん、177−14]
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 虔十はいつも縄《なわ》の帯をしめてわらって杜《もり》の中や畑の間をゆっくりあるいているのでした。
 雨の中の青い藪《やぶ》を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔《か》けて行く鷹《たか》を見付けてははねあがって手をたたいてみんなに知らせました。
 けれどもあんまり子供らが虔十をばかにして笑うものですから虔十はだんだん笑わないふりをするようになりました。
 風がどうと吹《ふ》いてぶなの葉がチラチラ光るときなどは虔十はもううれしくてうれしくてひとりでに笑えて仕方ないのを、無理やり大きく口をあき、はあはあ息だけついてごまかしながらいつまでもいつまでもそのぶなの木を見上げて立っているのでした。
 時にはその大きくあいた口の横わきを
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