すぐしめつたつめたい風と朽葉の匂《にほひ》とが、すつとみんなを襲ひました。
みんなはどん/\踏みこんで行きました。
すると森の奥の方で何かパチパチ音がしました。
急いでそつちへ行つて見ますと、すきとほつたばら色の火がどん/\燃えてゐて、狼《オイノ》が九疋《くひき》、くる/\/\、火のまはりを踊つてかけ歩いてゐるのでした。
だん/\近くへ行つてみると居なくなつた子供らは四人共、その火に向いて焼いた栗や初茸《はつたけ》などをたべてゐました。
狼はみんな歌を歌つて、夏のまはり燈籠《とうろう》のやうに、火のまはりを走つてゐました。
「狼森のまんなかで、
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火はどろ/\ぱち/\
火はどろ/\ぱち/\、
栗はころ/\ぱち/\、
栗はころ/\ぱち/\。」
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みんなはそこで、声をそろへて叫びました。
「狼どの狼どの、童《わら》しやど返して呉《け》ろ。」
狼はみんなびつくりして、一ぺんに歌をやめてくちをまげて、みんなの方をふり向きました。
すると火が急に消えて、そこらはにはかに青くしいんとなつてしまつたので火のそばのこどもらはわあと泣き出しま
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